インプラント治療を受ける人は以前に比べてかなり増えました。しかしながらインプラント治療に興味はあっても、不安の方が強くてなかなか決めきれないということはよくあるようです。インプラント治療を考えているが治療に不安があるという方へ、よくあるご不安内容やご質問を例に、お答えしていきたいと思います。
まず初めに<インプラント治療、というものには患者様の状態に応じて様々なケースがある>ということをご承知おきください。
インプラント治療をお考えになられる場合、ご家族やご友人などからご経験のお話をお聞きになられたり、ネットや雑誌などでインプラントにまつわる情報をお調べになられたりされることかと思います。例えばご友人の方から「インプラント治療をして痛い思いをした」というご経験談をお聞きになると「インプラントって痛いんだ・・・」と認識が強くなられることでしょう。同様に、メディアなどから「インプラントにまつわる失敗」のニュースなどをお目にされると「インプラントって怖いんだ・・・」といった認識もお感じになられるでしょう。
しかしながら、インプラント治療には患者様の状態に応じて様々なケースや手術方法があります。例えば歯を1本喪失され、インプラントを1本埋入するような手術では歯科医師が熟練していれば手術時間もかかりませんし、術後の痛みや腫れもそれほど想定されません。一方、上下顎ともに多くの歯を喪失、または悪くなっておられる状態では、1度に10本前後のインプラントを埋入するようなケースもあります。このような場合では当然ながら手術時間は増えますし、1本の処置に比べれば、術後の痛みや腫れも相応に生じることが想定されます。手術部位の大きさや侵襲程度の差が考えられます。
また例え1本の処置でも、元々の歯のご状態や骨の状態により手術の内容は異なります。それに応じて、痛かった・痛くなかった、腫れた・腫れなかった、という違いも生じます。患者様の口腔内の状態や手術の難易度の差が考えられます。
また、同じ内容の10本のインプラントの手術で、同じ歯科医師がいつもと同じように施術しても術後にAさんは痛かった・Bさんは痛くなかった、という違いも生じます。患者様の口腔内の状況や体質、感受性の違いによる差が考えられます。
上記のように、術後の痛みや腫れを例にとって考えてみても、様々な状況の違いにより、結果に差が生じます。よって「インプラント治療=痛い・腫れる」ということにはなりません。むしろ私共が日々インプラント治療を行う中で術後の患者様はどちらかというと「痛くなかった・腫れなかった」というケースのことがほとんどです。
以上のことから、お聞きになられた限られた情報などを基に「インプラント治療」のご判断をされることなく、インプラント治療ご担当の歯科医師の方とよくご相談され、「皆様ご自身のインプラント治療はどのような内容や程度の治療か?」を基にご判断されることをお勧めさせて頂きます。
インプラントの手術は痛みや腫れがどのくらい出るのか?
インプラント治療は歯が抜けた部分を補い、噛む機能、見た目の回復を行う治療です。このような「歯を補う治療」にはインプラント以外だと、ブリッジや入れ歯がありますが、インプラントがこれらの治療と大きく違うところは、手術が必要となる点です。手術と聞くと、痛みや腫れが出るのか不安になる人がほとんどだと思いますが、インプラント手術は、しっかりと麻酔が効いた状態で行いますので、手術中の痛みを感じることはほとんどありません。前述のように、手術内容によっても差がありますが、術後の痛みも痛み止めでおさまる程度の痛みの場合がほとんどです。中には痛み止めを飲まずに済む人もいます。腫れに関しても、ほとんどのケースで大きく腫れるということはありません。術後の腫れが強くでられる場合でも、術後数日をピークに1週間を目途に落ち着くのが通常です。
インプラント手術の失敗、事故は起こらないのか?
インプラントの手術に際し、失敗や事故が起こらないか不安に感じるのも当然のことです。メディアの報道で時々そのようなケースが紹介されることもありますので、そのようなものを目にすると怖くなって当たり前でしょう。しかし、このようなケースというのは、インプラント治療に未熟な歯科医師が起こしている、もしくは、術前にきちんと行うべき検査を行わなかった、というような不備が原因になっていることがほとんどです。また、前述しましたように口腔内の状況によって異なる手術難易度にも差があります。インプラント治療は適切な診断の基、きちんと行われれば安全な治療で、失敗が起こることは稀な治療です。難易度の高い症例であっても経験豊富なインプラント治療専門医や認定医の先生であれば尚更に安全を第一に考えます。
インプラントはすぐにダメになったりしないのか?
インプラントは安価な治療ではありません。そのため、インプラント治療を受けるからにはできるだけ長持ちして欲しい、もしくは長持ちして当然だと思われるのが当たり前でしょう。私共も是非皆様のインプラントは長持ちして頂きたいです。インプラントの耐用年数に関する調査によると、10年〜15年以上持っているケースが90%以上を超えているという結果になっています。保険の入れ歯やブリッジはおおよそ数年でやり直しが必要になる場合が多く、それと単純に比較しても、インプラントがいかに長持ちするかがお分かりになるかと思います。
しかしながら、インプラントが長持ちするかどうかは、毎日のお手入れや定期的なメインテナンスによって大きく変わってきます。お手入れやメインテナンスがしっかり行われなければ、数年でダメになってしまうこともありますし、それとは逆に、きちんとお手入れすれば数十年持たせることも可能です。いわゆる“一生モノ”の可能性も十分にあります。この点に関しては、天然の歯と全く同じ、ということが言えるでしょう。
持病がある自分でも大丈夫だろうか?
インプラントは手術が必要ですので、持病のある方は心配な方もいらっしゃることでしょう。インプラント手術に注意を要する代表的な病気としては、糖尿病、骨粗しょう症、リウマチ、などが挙げられます。これらの病気がある場合、程度によってはインプラント治療を受けられない場合もありますが、治療が可能なケースもあります。またこれら以外の病気でも注意が必要な場合がありますので、持病のある方、持病の治療薬を服薬している方は、歯科医師にその旨をきちんと伝え、よくご相談されるようにしてください。
費用はかなり高額なのだろうか?
インプラント治療は、現在の日本のシステムにおいては保険がききません。そのため、治療の費用に関しては、一般的な保険適応治療に比べると高額になります。保険適応治療以外の治療、つまり自由診療は、各歯科医院が自由に価格を設定して治療を行います。全国平均でいうと一本あたりの費用は大体35〜45万くらいが多いようです。しかし、この価格は使用しているインプラントメーカー、長期保証の有無、上部構造(歯)の種類などによっても変わってきますし、検査費用や麻酔代金など追加費用の有無によっても合計費用は変わりますので、記載されている料金だけを見て「高い」「安い」などと安易に判断することは早計です。価格が安くても、使用しているインプンラントメーカーが良質なものでなかったり、手術費、検査費、骨移植の費用などを含まない場合もありますので、その辺を事前によくご確認され、ご相談なさってください。