インプラントの治療成功の鍵

インプラントの治療成功の鍵

1.歯科医院選びについて

インプラント治療は、担当する歯科医師に高度な技術や知識ならびに経験が必要です。是非インプラント治療に専門的に取り組んでいる医院をお選び下さい。たとえば医科では外科だけでも、脳神経外科・心臓血管外科・小児外科・整形外科・形成外科等、多岐の専門分野があり専門医師がいます。歯科では、口腔外科・小児歯科・歯科麻酔科・矯正歯科・予防歯科・口腔インプラント科・保存修復科・歯内治療科・歯周治療科・咬合科等、多岐にわたり専門分野の歯科医師がいます。また専門の医院には専用の機器が揃えられていたり、各分野に熟練したスタッフもいます。

女性スタッフだけではなく、インプラント治療担当医がカウンセリングを実施している歯科医院の方がより適切なアドバイスを受けることができるでしょう。

CTレントゲンが設置された専門医院も歯科医院選びの一つの基準になります。これは近代的なインプラント・クリニックと一般歯科医院の大きな違いです。CTレントゲン撮影は手術前の診断だけでなく、術後や数年経過後、幾度にわたり、治療経過を観察するのに必要です。歯科医院に設置されています歯科用CTは病院にある医科用CTに比べ、放射線被爆量が50分の1〜100分の1と大変体に優しいです。また、歯科用CTは画像のコンピュータ解析が非常に優れています。安全で確実な治療の為には必須な装置であると我々は考えています。

オペ専用室がある歯科医院の方が好ましいでしょう。手術を行う場合には、より高度な衛生環境が求められます。

インプラント治療とは、手術だけでなく、望ましい歯を作製し装着するまでが一連の工程です。近年はより美しさを追求する審美歯科治療の概念もインプラント治療を行う上では重要な要素です。よって手術のみならずインプラントの歯を作製する上でも高度な知識と技術のある歯科医師が望ましいです。

歯科医院選びの際のご参考になれば幸いです。


2.歯科医師選びについて

インプラント治療は非常に進化し、ほとんど失敗することがなくなりました。今なお年々進歩し、より良いインプラントが開発されています。インプラントの「全世界の最先端情報」は、おもにヨーロッパのインプラント学会EAO(European Association for Osseointegration)、アメリカ本部のインプラント学会AO(Academy of Osseointegration)、ICOI(International Congress of Oral Implantologists)等の学会で、世界中のインプラント専門歯科医師や研究医療機関等の医師から発信されます。これらの学会等から学んでいる先生はより信頼できる知識をお持ちです。また、日本では、日本口腔インプラント学会があり、日本の研究医療機関等から最新情報が発信されています。

研究医療機関年々進化していくインプラントに費やす勉強時間、治療時間等から考えますと、医師一人で一般歯科まで担当している時間はありません。インプラントに特化している先生をお探しになられることをお勧めいたします。専門医院にはCTレントゲンなどの最新設備も設置されております。そのような医院では、安心して治療をうけることができるでしょう。また、自己流の治療法や信頼度の低いインプラントもありますので、どこの国のどのような種類のインプラントを使用されているかご確認下さい。口腔内で長持ちしないインプラントメーカーのインプラントも多く存在します。

世界には多数のインプラントメーカーがありますが、我々は、近代インプラント発祥の地スウェーデン・イエテボリ大学で研究開発されたA社インプラントを高く評価しています。理由はこのインプラントは過去のインプラントの欠点を、歯周病の世界的権威のLinde教授、工学博士のDr.Hansson、組織学のAlbrektsson教授、顎顔面外科のKahnberg教授らのグループで確実な研究開発、改良を行って非常に成功率を向上させたことや、臨床データやエビデンスを世界の専門医師に向けて発表している点にあります。しかし他にさらに良いシステムが開発されれば、我々はそのシステムに変えるよう日々インプラントの情報を収集しています。我々は現在、1ヵ月で15-20症例にA社インプラントを使用していますが、過去のインプラントより非常に骨と良好に結合することを確認しております。その他にも優れたインプラントシステムは多数ありますので状況に合わせその他インプラントも使用しています。

3.「骨がないからインプラント治療は無理」と、治療を断念された患者様へ

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「骨がないからインプラント治療は無理」と、治療を断念された患者様へ

インプラント治療を行うためには、その箇所にインプラントを植立できるだけの骨の量があるかどうかが問題になってきます。しかし、解剖学的構造から見てインプラントを植立するのが難しいという方もいらっしゃいます。たとえば上顎では、上顎洞という骨の空洞が非常に発達していて十分なインプラント埋入深度のとれない方。下顎では、下顎神経血管束との位置関係でインプラントを深く埋入することができない方などが、そうしたケースにあたり、一般的な歯科医院では難症例として扱われます。

また、歯周炎がかなり進行した結果、あるいは抜歯後に長期にわたって義歯(入れ歯)を入れてきた結果、歯槽骨の吸収を生じ、インプラントを支える骨が減少している場合も同様に困難です。一般的な歯科医院で行うインプラントは、あくまでもインプラントを植立するに足る骨がある人のみを対象にしているものが多く、こうした特殊なケースの方は治療を断られてしまうケースがあります。なぜならそれらに対応できる水準の技術を有していないからです。

しかし、これらの解剖学的問題に関しては、さまざまな手術法が開発されており、インプラントを専門とする医師は、そうした特殊な手術にも精通しているため、解剖学的構造を理由にインプラントを適用できないということは決してありません。むしろ、専門医院には、ほかの歯科医院でインプラント治療を断られた患者様が、最後の望みを託して訪れるというケースも少なくないのです。解剖学的問題のある患者様に対して骨移植を行うことにより、インプラント治療は可能な時代になっています。

4.「インプラントはよくない」と、かかりつけの歯科医から言われた患者様へ

現在のインプラント治療は、非常にうまく骨と結合し、良好な結果をたどります。我々の経験からしますと「インプラント治療は優れている」と断言いたします。今だに否定的な先生もいらっしゃいますが、本当に患者様のお気持ちを理解して考えてくれる先生かどうか、よくお考えになられてはいかがでしょうか。インプラント治療をご検討の際は、他の治療方法との違いをよくご相談されてみてください。これだけ世界中でインプラント治療が発展し普及しているのは優れた治療法であることの表れの一つではないでしょうか。

5.「手術は怖い」と、ご不安な患者様へ

「骨がないからインプラント治療は無理」と、治療を断念された患者様へ

手術をするのは「怖い」といったご不安な気持ちはどなた様でも少なからずあると思います。この「怖さ」を取り除き和らげるために「静脈内鎮静法」と言う方法を使用します。少量の安全な量で短時間作用する精神安定剤を静脈より投与します(痛くありません)。患者様は術中軽く眠っておられるような状態です。この方法は、生体モニター(呼吸や脈拍等・お体の状態を監視する装置)を使用して行いますので安全ですが、院内に専用の薬剤や機材等を備え、また術者が方法に慣熟しておく必要があります。

一方、内服薬で不安を和らげる方法もありますが、内服薬の効果は不安定で作用する時間も個人差があるます。インプラントの術中平均約1時間半程度、うとうとと眠った状態を保つには「静脈内鎮静法」の方が有利です。

また、鎮静の効果は、精神的な緊張がなくるので血圧の上昇等も押さえ、高血圧症等の患者様にもより安全な手術となります。

手術に対して「怖い」お気持ちが強い場合などには、この「鎮静法」を併用し処置を受けられるようご相談されると良いかと存じます。

6.「インプラントは高額だから」とお思いの患者様へ

インプラント治療は自費治療であるため、健康保険の適応される治療内容に比べ費用がどうしても高額になります。しかしながら安価だからといって、例えばブリッジ治療のように従来の歯を削る治療をくり返しますと、歯が長持ちしなくなります。インプラントにはメリットの一つに、近隣の残存する歯はそのままでダメージを与えずに、失った歯を回復させるという点があります。つまりインプラントは健康な歯は健康なままで保存する治療でもあります。

隣在する歯に負担を強いる従来型の入れ歯やブリッジといった方法は、その固定源となる歯まで長持ちしなくなる可能性が高くなり、結果、喪失する可能性が高くなってしまいます。

安価な治療を繰り返し、そのたびに費用が発生し、大切なご自身の歯まで傷めてしまう可能性がある方法と、当初の費用こそ大きくなりますが、健全な歯はそのままで、そして大切にケアすれば長年使用できる可能性の十分にあるインプラント治療とでは、費用対効果にも違いがあります。

歯を削る治療の悪循環


7.インプラントの歯(上部構造)

インプラントの歯(上部構造)インプラント治療は、インプラントを埋入する手術の後、歯(インプラントに装着する歯を“上部構造”といいます)を作製し口腔内に装着するまでの工程があり完成します。歯が出来上がりますと、皆様がインプラント治療によって喪失した歯が回復したことを一番実感される瞬間でもあります。

インプラントの歯を作製する際には「どのような材料で、どのようなデザインの歯を、どう作製するのか」の詳細な内容を歯科医師が決め、歯科技工士の方々にオーダーすることにより工程が始まります。よって、歯科医師が歯科技工士といかに緊密に連携をとり工程を進めていくのかが“望ましい歯”を作製する上で非常に重要な要素となります。

近年、歯科治療においては、単純に歯を作製するだけではなく、より綺麗に、より美しく、といった審美的な要素へのニーズが高まっています。前歯の治療などでは尚更その傾向は高まります。

また、それらニーズに伴い、歯の作製に用いる材料や製作方法は、特にセラミックの分野で強度や品質が飛躍的に進化しています。新しいマテリアルが各社から研究・開発され供給されています。

一方、歯を作製する際に「こういうデザインの歯を作りたい」と我々歯科医師が考えても、実際に難しい場合があります。いわゆる“歯の形”というものは、皆様それぞれの歯並びや咬み合わせ、噛みあう歯の状態、歯を作製する部分のスペース、隣在する歯の形態や歯ぐきの状態などにより左右されます。よってそれら要因によりどうしても制約を受けるケースがあります。制約を受けるケースほど、歯科医師の知識と技術、経験やノウハウが求められます。

以上のことから、皆様それぞれ個別に異なる状況の中、“適切な”インプラントの歯を作製することはそう簡単なことではありません。個別に異なる状況を把握し、ニーズを踏まえ、進化する歯の素材について古い知識にとらわれることなくきちんと学び精通し、歯科技工士の方々と緊密に連携し、皆様それぞれにとって“適切な”インプラントの歯を“創る”ことのできる歯科医師が求められると私共は考えています

8.インプラントのメインテナンス

インプラントの歯(上部構造)インプラントは、ケア(メインテナンス)が非常に重要です。大切にケアすることにより、いわゆる“持ち”が異なってきます。これは例えば家でも車でも同じことだと思います。お掃除したり必要に応じて修繕することにより長持ちすることかと存じます。

インプラントのケアには大きく分けて2つの要素があり、一つは皆様がご自身で日常行うケア(セルフケア)、そしてもう一つは我々歯科医院で定期的に行う検診とケア(プロフェッショナルケア)です。

まず日常のケアですが、これには特殊な器具は必要ありません。皆様が日常歯磨きをされる道具、歯ブラシ・歯間ブラシ・デンタルフロスといったもので十分です。補助的に電動歯ブラシや含嗽剤(うがい薬)があっても良いでしょう。ケアの方法は治療を受けられた医院様で説明があるかと思いますが、通常の歯と同様に丁寧に磨くことが肝要です。インプラントは口腔内で機能します。よって口腔内の環境を清潔に保つことがインプラントも通常の歯も長持ちにつながります。

そして次に重要なのが我々歯科医院での定期健診とケアです。定期健診に関しては我々は少なくとも半年に一度、できれば3-4ヶ月に一度で受診されることをお勧めします。日常のケアでは除去できない蓄積した汚れを専用の機材を使用し、歯科衛生士が口腔内を衛生的な環境に致します。インプラントのみならず皆様の大切な歯が長持ちするようメインテナンスは重要です。

9.保険治療とインプラント

インプラントの歯(上部構造)現在、日本国は大きな財政赤字を抱えています。一年間の国家予算の内、医療費が30兆円、福祉まで入れると40兆円もの財政を使っています。日本国はこの膨大に膨れ上がった医療費をなんとか抑制しようと計画しています。従って、将来にわたりインプラント治療に保険が適用されることはまずないでしょう。

インプラント先進国のスウェーデン等では20才までの未成年や65才以上の老人を除いては、インプラント治療に保険がきかず、高額治療に備え民間保険に加入して毎年高い保険料を支払っています。アメリカ人も民間保険に加入して、国からの保障がないのが現状です。

日本ではインプラント治療はすべて自費負担治療です。よって、保険適応される一般歯科治療の費用に比べてどうしても高額となってしまいます。医院によっては一括払いやデンタルローンなどのお支払い方法のある場合がございます。ライフスタイルにあったお支払方法をご相談されてみてください。

10.予防歯科・遺伝子治療とインプラント治療の未来

インプラントの歯(上部構造)近年、日本では歯科医師・歯科衛生士の努力により、むし歯および歯周病は減少してきております。これはスウェーデンのP.Axelsson先生らの研究したむし歯の予防方法を実践する歯科医が増えていることや、歯磨材にフッ素が含有されていること、幼少期からの家庭や教育機関での取り組みなど、治療から予防への知識が普及していることにあり非常に好ましい傾向にあります。

また、スウェーデンのLinde先生らにより歯周病の原因等が、多く解明されてきました。しかし、いまだにむし歯や歯周病について不明な点が多く、撲滅できない状態であります。将来は、遺伝子治療によって、むし歯や歯周病にならない人を作り出すような時代が到来するかもしれませんが、現時点では夢の構想です。遺伝子治療が現在承認されているのは、癌等の一部の特定の病気のみとなっています。

インプラントも年々進化していきますし、予防歯科も益々発展してきた現在、最小限度のインプラントとご自身の歯で生涯を過ごせるのは、そう遠い時代ではありません。

11.Quality of Life

インプラントの歯(上部構造)日本においては、憲法で、私達の自由が保障されています。私達は、私達自身の思うように生活できる社会にいます。「健康」な生涯を送るのかどうかは自分自身で考え決定することができる時代です。そして、私達のような医療人の目的は、「健康ですこやかな生活」を願う方々のお役に立つことにあります。

では、「健康」とはどのようなことを意味するのでしょうか。医学的検査に異常がないことでしょうか。年老いていく中で、医学的検査の少しの異常値が現れるのは、自然の現象ではないでしょうか。口腔内で申しますと、高齢になれば少なからず誰でも歯周病に罹患していますが、「不健康」なこととは思いません。「健康」とは、医学的検査値のみで決定されるのではなく、人生毎日毎日を有意義に過ごすように、日々努力をしている方々が、手に入れることのできる「幸福感」を感じることも大切な要素と存じます。

歯と「健康」「幸福」とはどのような関係があるのでしょうか。まず、食べるのには歯は必要ですし、咬むことにより、脳への血液がよくなり、老化防止に良いと言われています。また、社会の人々や家族と大切なお話しをしたり、会話を楽しんだり、お食事をしたり、楽しいひとときを過ごすために快適な歯は必要かと存じます。是非ご高齢の方々にご理解して頂きたいのは、長年頑張って人生を過ごされたご先輩の方々は、人々から尊敬されるべきです。尊敬に値するご高齢者の方々には、快適な歯があり、知的であるべきと考えています。是非、我々人生の後輩に対し、健康な笑顔で良き人生のアドバイザーとなって頂きたく存じます。

最後になりましたが、『インプラント治療の成功の鍵』につきまして、ご参考にして頂ければ幸いです。

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